昨年オフに続き今シーズンオフもFA選手の所属先が決まらず、FA市場が停滞しています。
今シーズンはブライス・ハーパー、マニー・マチャドというFA史上でも最高クラスの選手がいるにも関わらず移籍先が決まっていません。
それも争奪戦が繰り広げられているわけではなく、球団側は相場が下がるのを待ち、選手側が満足できる契約が提示されないためです。
バーランダー「システム壊れている」FA制度に苦言 https://t.co/6tkXrWfzWB
— ニッカンMLB情報 (@MlbNikkan) 2019年2月12日
17年オフも停滞しましたが、その際は18年オフに大物が市場に出るため、各球団が予算を渋っているとも言われました。
それが18年オフになっても各球団が予算を渋っているので批判も多いわけです。
FA市場が停滞している原因
現在のFA市場は主力級の選手すら契約が決まらないような状態です。
今回はそのような主力選手すら停滞している市場に巻き込まれる原因について話したいと思います。
FA市場が停滞している原因としてあげられるのが、広い意味で長期契約を結ぶことのリスクが高いことです。
わかりやすいのが
・契約期間中のパフォーマンス低下(いわゆる給料泥棒状態になること)
ですよね。
FAを取得している選手の多くは、年齢的にも衰えのリスクが高いものになります。
もちろん、年齢が高くなれば怪我のリスクもより高くなりますしね。
契約の後半に衰えることを前提で、それでも契約の前半に活躍し優勝に貢献してほしい。
という考えのもと、長期契約を結ぶこともあります。
エンジェルスのアルバート・プホルスがまさにその典型です。
しかし、結局は契約の前半から衰えが顕著で、チームも思うように勝てず、史上最悪のFA契約と言われるまでになってしまいました。
このように選手のパフォーマンスの低下は予測が難しいです。
ロースターの硬直化
もう1つのリスクがロースターの硬直化です。
長期契約中の選手がいれば、若手が育ってきても使うポジションがないケースが出てきます。
同じ実力なら若くて年俸が安く将来性のある選手を使いたいのですが、そうもいかないわけです。
まあ、長期契約中の選手が活躍してくれれば問題ないのですが、そうでない場合も多いわけで・・・。
若手を使いたくても使えないケースも出てくるわけですね。
若手が出てきたから、主力を他球団にトレードで放出というパターンも考えられます。
実際に以前であれば、年俸に見合う活躍が出来ていれば引き取り手があったわけです。
ですが、現在のMLBは贅沢税制度の導入(ペナルティの強化)により、実質サラリーキャップ制になっています。
これにより予算が潤沢にある球団も総年俸をあげることに躊躇するようになっています。
例えばレッズのジョーイ・ボットなんて、球界最高レベルの打者として活躍する一方で、チームの再建がうまく進まず宝の持ち腐れ状態になっていました。
本来ならチームのためにもボットのためにも放出という選択肢があるのですが、長期契約が足かせになり放出ができませんでした。
で、ようやくチームが強くなってきたと思ったら、ボットの衰えが気になる年齢になってきたという・・・。
もしかしたらボットの契約が足かせになり、せっかく強くなったのに補強が進まず優勝まで届かない可能性が出てくるかもしれません。
マイク・トラウトが宝の持ち腐れ状態になっているエンジェルスも、トラウトのトレード放出論も根強いわけですが・・・。
結局はプホルスの契約があるので、トラウトを放出したところで再建の計算が立ちにくく、中途半端な補強で勝つ姿勢を見せるしかありません。
このように長期契約によるロースターの硬直化というのは悩ましい問題です。
金満球団の無駄使いで終わればまだマシなのですが、ぜいたく税の影響で金持ち球団までお金が使いにくい状況になっているわけですね。
レッドソックスは将来を犠牲にして勝つ姿勢を見せ、実際に世界一になりました。
彼らは最高の結果を出して報われていたわけですが、もし故障者が続出したりして優勝できなければ、将来性もない最悪な状態になるリスクもあったわけですね。
エンジェルスもレッドソックスのように将来を犠牲する選択肢もあるわけですが、同地区のライバル球団が強いこともありイマイチ振り切れないところです。
FA市場が停滞している根本的な原因
ようやく本題ですが・・・。
結局、これらの状況を招いている根本的な原因というのは、FA制度がおかしいわけでも、ぜいたく税制度ではありません。
「年俸調停制度」です。
NPBとMLBの年俸制度の違いを説明するのはややこしいので省くとして・・・。
僕はこの年俸調停制度で将来的にMLBが破たんするのではないかとすら危惧しています。
現在の状況だって10年前から兆候があったことで、なにもここ数年の話ではないのです。
Thank you for the overwhelming support of my letter to Philly. Y’all are the best. https://t.co/B7ZzopPshp pic.twitter.com/0InI2SCdiq
— Ryan Howard (@ryanhoward) 2018年9月4日
かつてフィリーズのライアン・ハワードが調停1年目(MLB3年目)で約10億円の年俸を勝ち取りました。
このような判例が出たことで、調停権を得た選手はどんどん高年俸を得ることができるようになっています。
そして低予算の球団は調停権を得た選手(3、4年目の若手)を雇うことができなくなっています。
結果どうなるかと言えば、高年俸を払えないならトレードに出すか、日本で言う自由契約になるか。
そして、主力級の選手なのであれば調停権を得る前に、割安価格で長期契約を結ぶ選択肢を取る球団が多くなりました。
現在FA市場に出てくる大物選手の多くが、若手時代に長期契約を結んだ選手になってきています。
だから本来なら28歳ぐらいでFAになるところが、30歳でFAになったりするわけです。
ちょうど日本のFA選手みたいな年齢のFA選手が多くなってきたというわけですね。
日本のFA選手を見ればわかるように、移籍後は衰えなどもあり期待通りに働いたケースの方が少ないかもしれません。
現在のMLBでFA後に長期契約を結んでいる選手の多くが、期待通りに働いているとは言えない状況です。
球団が大物選手だからと契約を渋るのも無理もない話ですからね。
このようなことから僕はFA市場が破綻したと言われる根本的な原因が年俸調停制度にあると思うわけです。
調停で高年俸の判例がでなければ、贅沢税制度があってもいくらか予算に計算が立てやすいですしね。
ハワード以降も、どんどん調停権を得た選手の年俸が上がっています。
現在は好景気だからいいですけど、いずれ停滞したときに破たんするのは目に見えています。
高年俸の判例が出ている以上は、MLBの経済が停滞したところで高年俸の判例が出ちゃうわけですから・・・。
18年オフ大物FA2人は例外ケース?
ちなみに18年オフのハーパー、マチャドは例外的な存在で、長期契約を結ばずにFAとなっています。
だから彼らは比較的若い年齢でFAになっており、近年最高レベルのFA選手になっているわけですね。
また、彼らだけでなく現在の若手主力選手の中にはFA前に長期契約を結んでいない選手も増えたような気がします。
彼らもFA前に長期契約を結ぶより、FAで長期契約を結んだ方が稼げるという考えなのかもしれません。
(年俸自体は調停のお陰でFA選手並みに稼げますしね。)
ですが、ハーパー、マチャドを見るに、若くしてFAになったところで球団が出し渋るようだと今度どうなるかわかりませんね。
もっともハーパーは怪我も多く、本来のポテンシャルを十分に発揮されていない選手。
マチャドに関しても精神面の問題が指摘されていることも、長期契約に及び腰な球団が多い理由だと思います。
彼らは当初期待されたような、史上最高額の契約を結ぶ可能性は低くなってきている感じですが。
それだけでなく本当に所属球団が決まるのかすら気になる状況になってきましたね。
本当に2人の動向が気になるところです・・・。